Extra Fight集 〜年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません〜
「……綾香」
「何?」
「……納得いかないんだけど」
「何が?」

綾香は、リボンがついた、黒いねずみの耳カチューシャを身につけて、ご機嫌だった。
カップルでつけるというのなら、僕もねずみの耳をつけてしかるべきだろう。

それなのに、綾香が選んだのは


「何で、海賊の帽子なの?」
「それ……は……」

綾香が言いづらそうにモゴモゴしている。

「それは何?」
「それはですね……」
「言わないとここでキスするよ」
「加藤さんにすっごく似合うと思ったからです!!!」
「言わないでよ!って……え?」

この海賊の帽子というのは、有名なハリウッドスターが身につけたものによく似ていた。

「……加藤さん、顔立ち綺麗だから……それ被ったところ……見てみたかったんです……」

綾香が、僕に似合うと思って選んでくれた。
前、僕は綾香に似合うと思ったワンピースを買った時と、同じ気持ちを今持ってくれているのだとしたら……。
やばっ……すごくすごく嬉しい……!

「わかった。僕はこの帽子を被ってるよ」

でも。
僕は周囲を見ていて気づいたことがもう1つあった。
< 45 / 58 >

この作品をシェア

pagetop