Extra Fight集 〜年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません〜

い、一体何がまずかったんだ……！？
そう言えば。
考えていることをすっ飛ばして、本質だけを言うのは、時と場合を選んだ方が良いと、河西くんから警告されたことがある。
私には、そういう癖があるとも。

「あのぉ……加藤さん……？」

まずい。
どうやって鎮めればいいのだ。
般若加藤を。
でも、このまま何も話さずにいるのは、正直身が持たないので、解決策なく話しかけてみた。
すると……。

「財布、出して」
「え？」
「今日、預かるから」
「何で！」
「勝手に、お金払わないように」
「ど、どうしてそんなことしないといけないんですか！」
「どうしても」
「いやです！」
「上司命令」
「今は労働時間外！」

そんなこんなで、いつもと同じように喧嘩になりそうな時だった。

「お待たせしました〜」

と、まるでプリンセスのような声で間に入って来たのは、コース料理を持って来たコスチュームのお姉さん。
気のせいだろうか。
すごーく、気まずそうな表情をしている。
さらに。

「お二人が仲良くなるように、魔法を込めておきました」

というセリフがお姉さんから出てきたので、今すぐ可能ならば川に飛び込みたくなった。
……飛び込んだところで、ひっきりなしにボートが来るので、水の中に逃げられるわけはないのだけれど。

「…………食べようか」

般若加藤も、いつの間にか通常加藤さんに戻っていた。

「そうですね……」

私は、スマホでパシャリとコース料理の様子と、こっそり加藤さんが食べようとしている姿を写真におさめた。
……問題が起きたのは、この直後。