能力を失った聖女は用済みですか?prequel
「おお! 聖女様だ!」
「聖女様が降臨なされたぞ!」
「めでたい! 成功だ!」
丈の長いローブを羽織ったオジさんたちが私を見て口々に叫ぶ。
見たところ、教会の聖職者のようだ。
おかしいな、私、大学内にいたはずなのに。ここはどうみても、外国の大聖堂のような場所である。
あの一瞬で宇宙人に拉致され、脳内をいじり倒されたのか、眩しい光に転けて頭を打ち、夢を見ているのか。
考え込んでいると、どこからか金髪美少年がやって来た。
彼の出で立ちもお伽話の王子のようである。
「聖女様! ようこそお越しくださいました!」
美少年はさっと跪く。
私は……脳内で再生されるお花畑なイメージに愕然とした。
……だめだ、これ、相当疲れてる。
元気だけが取り柄だったのに、精神が崩壊しかけていたなんてーー!
「聖女様? どうされました?」
美少年は不思議そうに私を見上げた。
そう言えば、さっきから「セイジョ」と問いかけられる。
私の名前はルナなんだけど?
「セイジョって……私ですか? どなたかとお間違えでは?」
恐る恐る聞いてみた。
自分の脳内と会話するなんて変だけど、妙にリアルな状況に、問いかけずにはいられなかったのである。
「え? いいえ、とんでもない! あなたが我が国ロランの聖女様です」
「我が国? ロラン? すみません、ここはロランという国なのですか?」
「はい!ここは世界一の大国、誇り高きロランの大神殿!あなたは我が国が召喚した聖女様です!」
「召喚したセイジョ?」
自信たっぷりにふんぞり反る美少年は、大きな鏡を私の前に持って来させ、覗くようにと促した。
「さぁ、ご覧下さい。異世界からやって来た聖女様の髪は紫色になるのです! どうです?」
「紫? あははっ、私の髪は黒ですよ?バリバリの日本人ですから……はぁ!?」
あ、あ、あ、あり得ないっ!
鏡に映る私の髪色は紫。ご丁寧に瞳の色まで紫色だったのだ。
姿見には、目と髪だけ外国人のような女が、泥のついたグレーの作業着に長靴を履いているという滑稽な姿が映し出されている。
これはもう、私の脳内のキャパシティを越えている。
幻想だと思っていたものは、現実で。
私は、その、つまり……本当に異世界とやらに来てしまったようだ。
~つづく?~
「聖女様が降臨なされたぞ!」
「めでたい! 成功だ!」
丈の長いローブを羽織ったオジさんたちが私を見て口々に叫ぶ。
見たところ、教会の聖職者のようだ。
おかしいな、私、大学内にいたはずなのに。ここはどうみても、外国の大聖堂のような場所である。
あの一瞬で宇宙人に拉致され、脳内をいじり倒されたのか、眩しい光に転けて頭を打ち、夢を見ているのか。
考え込んでいると、どこからか金髪美少年がやって来た。
彼の出で立ちもお伽話の王子のようである。
「聖女様! ようこそお越しくださいました!」
美少年はさっと跪く。
私は……脳内で再生されるお花畑なイメージに愕然とした。
……だめだ、これ、相当疲れてる。
元気だけが取り柄だったのに、精神が崩壊しかけていたなんてーー!
「聖女様? どうされました?」
美少年は不思議そうに私を見上げた。
そう言えば、さっきから「セイジョ」と問いかけられる。
私の名前はルナなんだけど?
「セイジョって……私ですか? どなたかとお間違えでは?」
恐る恐る聞いてみた。
自分の脳内と会話するなんて変だけど、妙にリアルな状況に、問いかけずにはいられなかったのである。
「え? いいえ、とんでもない! あなたが我が国ロランの聖女様です」
「我が国? ロラン? すみません、ここはロランという国なのですか?」
「はい!ここは世界一の大国、誇り高きロランの大神殿!あなたは我が国が召喚した聖女様です!」
「召喚したセイジョ?」
自信たっぷりにふんぞり反る美少年は、大きな鏡を私の前に持って来させ、覗くようにと促した。
「さぁ、ご覧下さい。異世界からやって来た聖女様の髪は紫色になるのです! どうです?」
「紫? あははっ、私の髪は黒ですよ?バリバリの日本人ですから……はぁ!?」
あ、あ、あ、あり得ないっ!
鏡に映る私の髪色は紫。ご丁寧に瞳の色まで紫色だったのだ。
姿見には、目と髪だけ外国人のような女が、泥のついたグレーの作業着に長靴を履いているという滑稽な姿が映し出されている。
これはもう、私の脳内のキャパシティを越えている。
幻想だと思っていたものは、現実で。
私は、その、つまり……本当に異世界とやらに来てしまったようだ。
~つづく?~