能力を失った聖女は用済みですか?prequel
「やはりお前に搔いてもらうのが一番気持ちいいな!ありがとな!」

朗らかに言うディアーハは、人から恐れられ敬われる聖獣とは程遠い。
話し方も親戚のお兄さんのように気さく(親族はいないから私の勝手な想像)で、とても話しやすい。

「私じゃなくてもいいんじゃない?人の手なら」

「ダメだ。俺様の体に触れていいのは俺様が認めた者だけなんだよ!なんつーかよ、気持ちわりーんだよなぁ」

ディアーハは体を起こしてきちんと座り直した。
彼の意外と繊細な言葉に、私は目を丸くした。
生肉をバリバリ貪りそうな白虎が「人に触られるのが気持ち悪い」とか、見かけ倒しにも程がある。

「へぇ、そうなんだ。じゃあさ、どんな人なら認められるわけ?」

「そうだなぁ……」

ディアーハはうーんと唸りながら天を仰ぐ。

「面白そうな奴かな」

「面白そう?……って、どうやったらわかるの」

「嫌な気が感じられない人間だ」

「漠然としてるわね。もうそれ、ディアーハの好みの問題じゃない?」

するとディアーハは、ふんっと鼻を鳴らし断言した。
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