一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 大学の時に意気投合し、出自を知っても変わらずに接してくれた稀有な女性。若くしてタチバナホテルズの社長となった深冬を陰ながら支え、彼が落ち着くまでは結婚を求めず十年も待ち続けた人。それが私らしい。

 ちなみに式はしない。半年の関係だし、忙しい深冬にそんな暇はないからだ。

 そして私が橘杏香になった数日後の週末には彼の家へ引っ越しを終えた。

 彼が住む高層マンションのペントハウスには使われていない部屋がいくつもあり、そのうちのがらんとした一室を私の部屋にしてもらった。

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