一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 そうは言うも、かぶりつく前に半分に割って彼に差し出す。

 コンビニのあんまんなんて御曹司の口に合うとは思えないが、相手は深冬だ。きっとこういうものを好むだろう。

 私の予想は見事に当たり、彼は文句も言わずあんまんを口に運んだ。

「お前の方も忙しそうだったな。もう平気なのか?」

「おかげさまで。あなたとのなれそめも聞かれなくなったよ」

 中途で入ってきた新人と社長が電撃結婚だと聞いて、同僚たちは大騒ぎだった。まだあまり接点がないというのに、次から次へと話しかけてきたのだ。

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