一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 日本語で説明できるならばそれが一番いいが、日常会話レベルで使える言語が複数あるのに使わないのはなんとなくもったいない気がしていた。そのほんの少しもやもやした気持ちをアモラリアのコンシェルジュデスクは解消してくれる。

「勤務時間が決まってなかったら一日中働いていたいぐらい。早朝のお客様とも接してみたいし、夜は夜でまた違う働き方になりそう」

「新婚なのに家に帰ってこないつもりか?」

 深冬がふっと笑って私との距離を詰めた。

 あとひと口分残っていたあんまんを取り落としそうになり、慌てて口の中に放り込む。

「あなただってアモラリアに宿泊するでしょ?」

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