一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「たまに、だ。サービスが行き届いているか、相手が俺だからと過剰なことをしないか、定期的に見る必要がある」

 そう言いながら彼は私の髪にさらりと指を絡めた。

「今はたとえ城に泊まれると言われてもこの家に帰りたい。杏香がいるからな」

「妻になれない妻でもいいの?」

 彼との仲は険悪どころかむしろ良好だ。

 恋愛感情を抱いている彼に対して罪悪感はあるものの、本人は私がいさえすればそれでいいようだった。

 今すぐ想いに応えなくてもいいから、側にいればいい。

 長い間求め続けるだけの空白があった分、彼の要求は大きいようでとても小さい。

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