一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 一度深冬を潜り込ませたらそれで終わりだ。どこまでも彼に溺れて、取り返しがつかなくなる。

「キスだけにして……」

 だめだとわかっていても彼が欲しい。

「わかった」

 心の内を探るような優しい口づけは私を溶かしてぐずぐずにする。

 深冬にまた恋をしたくない。私は彼以外の人と恋愛できないから、この人に捨てられたら生きていけなくなる。

「あなたが好き。でも、怖い……」

「……俺のせいだな」

 私が首を横に振ると、彼は髪をなでてくれた。

 不幸な偶然が重なっただけで、私たちのどちらもあの別れに責任はない。

「ごめんなさい……ごめんなさい」

「もう、いい。……泣くな」

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