一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
兄弟
十一月を中ごろまで過ぎたある日、コンシェルジュデスクに目を見張るような美丈夫が現れた。
「なにかお困りでしょうか?」
話しかけた私に、見知らぬ男性は笑顔で答える。
「君と話をしてみたくてね」
少しも照れた様子なく言い切った彼に対して尊敬に似た気持ちが生まれた。
こんなに愛想のいい甘い笑みを向けられてのぼせない女性がいるのだろうか。
彼はやや垂れ目で愛敬がありながらも、子供っぽさは感じさせない。男性にしては肌がとてもきれいで、私と同じくらいか少し上くらいの年齢に見えた。