一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「申し訳ございません、今は勤務中ですので。お時間があるようでしたら、十分後に三階アクアラウンジにてピアニストによる演奏が行われますので、是非足をお運びください」
アモラリアに勤めてからこういう誘いを受けたのは初めてだ。もっとも、ホテル王として有名な深冬の妻としてある程度の認知度を得てしまったのだから当然といえば当然である。
男性は私に断られてもデスクを離れなかった。
考えた様子を見せた後、カウンターに肘をついてにこりとまた笑う。
「もうひとつだけ質問。君は橘深冬を愛してる?」
すっと背筋に冷たいものが走ったような気がしたのは、たぶん男性の目が笑っていなかったからだ。
アモラリアに勤めてからこういう誘いを受けたのは初めてだ。もっとも、ホテル王として有名な深冬の妻としてある程度の認知度を得てしまったのだから当然といえば当然である。
男性は私に断られてもデスクを離れなかった。
考えた様子を見せた後、カウンターに肘をついてにこりとまた笑う。
「もうひとつだけ質問。君は橘深冬を愛してる?」
すっと背筋に冷たいものが走ったような気がしたのは、たぶん男性の目が笑っていなかったからだ。