一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「……プライベートに関する質問にはお答えできません」

「ひと言でいいよ。好きでも嫌いでも。どっち?」

「ですから……」

 彼の目的がわからず薄ら寒い怖さを感じていると、ロビー中央の大階段から下りてくる深冬に気がついた。

 今日は二十八階の料亭にて会合があると言っていたから、きっとそれを終えて外に向かうところだろう。

 深冬は私のいるコンシェルジュデスクに目を向けると、らしくないほどはっきり不快そうな顔をしてまっすぐ近付いてきた。

 そしてなかなか立ち去らない男性の隣に立つ。

「智秋(ちあき)、こんなところでなにをしているんだ」

「義理の妹の顔を見に来ただけだよ」

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