一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「温泉に入ってくるね。お酒も少ししか飲んでないし、今日はたくさん歩いて疲れちゃった」

「待て。大浴場に行くつもりか?」

 深冬が旅行カバンから着替えを引っ張り出そうとした私の手を止める。

「そうだけど……。一緒に行く?」

「温泉なら部屋にもある。しかも露天風呂だ」

「あ、そうなんだ」

 ここへ来たばかりの時は深冬のせいでゆっくり部屋を見られなかったし、観光から戻ってきた後もすぐに夕飯だったから知らなかった。

「そうなんだ? それで終わりか? 大浴場には誘うくせに」

「えっ、だってそれは……」

「ふたりで入ろう。それとも俺と混浴は嫌か」

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