一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 なんとなく予想していたというのに、思わずタオルを落としてしまった。

「で、でも、それは、混浴なんて」

「先に入って待っているからな」

 深冬は私の返事も待たず、自分の着替えとタオルを持って浴室へ消えていった。

 私が彼を無視して大浴場に行くとは考えないのだろうか。

 来ると信じているから振り返りもしなかったのだろうか。

 落としたタオルを拾って胸に押し当てると、手に微かな鼓動が伝わる。

「……十九の私も二十九の私も変わらないじゃない」

 同じ気持ちで恋愛ができないなんて嘘だ。

 夫婦だというのに、混浴というワードだけでもうどきどきして顔が熱い。

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