一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 縛られているわけでもないのに、彼の腕から逃れられない。

 振り返った私の両頬を手で包み込んだ深冬が、肌に落としていた口づけを唇にも与える。

「俺を好きなんだろう?」

「……うん、好き。でもまたあんな思いをするのは嫌……」

「だったらいっそ嫌いになれ」

「できないよ……」

 彼に求められるほど心は頑なになる。

 それを申し訳ないと思うのに止められない。

 たったひとりで迎えた朝の寂しさと痛みは二度と味わいたくなかった。

「嫌いな振りもできないお前がかわいくてたまらない」

「かわいいなんて言わないで。そんな人間じゃないんだから――」

「一生側で言い続けてやる」

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