一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 今まで触れてこなかった場所のすべてに触れようと、彼の手はたしかな熱を私の身体に残していった。

 小さく濡れた声をあげながら指先に翻弄され、耐えられなくなって自分の顔を覆う。

 なにも見えなくなったことで余計に指の動きを意識してしまい、スカートを脱がされるだけでも声がこぼれた。

「……もしかして揃えたのか?」

 手のひらで覆った暗闇の中に深冬の声が響く。

 彼がなにを見てそう言ったのかはすぐにわかった。

「今日……こういうことになるかもって思ったから。変な下着にはしたくなくて……」

 特別な夜の思い出のため、大学の友人に茶化されながらも新しい下着を買いに行ったのだ。

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