一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 普段の自分なら絶対に身につけないパステルピンクのレース。お値段もなかなかのものだったが、彼にかわいいと思ってもらえるなら惜しくはなかった。

「あのな、杏香。そういうのはずるいぞ」

 顔を隠していた手をどけると、呆れた顔の深冬と目が合った。

「そんなかわいいことをされたら、もう優しくなんてしてやれるわけないだろ」

 自身の荒々しい欲を堪えるような声の響きにどきりとして再び顔を隠そうとするも、それよりも早く深冬が私の手を掴んで自分の口もとに引き寄せた。

「これ以上、俺を興奮させないでくれ」

 指を絡められた手の内側を噛みつくように口づけて言う。

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