一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 きっぱり言い切られて絶句した私に、深冬が苦笑に似た笑みを向ける。

「それだけ愛されていた自信があるからな」

 彼は十年前に過ごした短くも幸せだった時間を信じ続けていたのだ。

 あの時の私の想いが今も変わっていないと確信して、私が踏み出す瞬間を待っていた。

「深冬はすごいね。私は悪い方に考えてばかりだったのに」

「お前が怖がるのは俺がひどい目に遭わせたのもあるが、両親のせいでもあるんだろう。悪い方向に考えたがるのはその方が安心するからだ」

「嫌だな。ポジティブでいようと思ってるだけで、本当はこんなにネガティブなんて」

< 199 / 261 >

この作品をシェア

pagetop