一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 熱に浮かされたような吐息交じりの声が私の耳をかすめた。

「その先は一か月後か。長すぎるな。……十年に比べれば短いか」

「きっと一瞬だよ。私たちが出会うまでも、長かったけどすぐだったんだから」

 深冬は私が欲しいという気持ちを隠そうともせず、唇を甘噛みしては舌を絡め取った。

 恐ろしい思いをしたからだろうか、彼の行為のひとつひとつが愛おしくて尊い。

 私も負けじと彼にキスを返したが、これはやめておいた方がよかった。

 お互いにもどかしい欲望を抱える羽目になり、唇を触れ合わせるだけでは足りなくなったからである。



< 201 / 261 >

この作品をシェア

pagetop