一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
再会
窓から冷たい秋風が吹き抜け、ふるりと身を震わせて夢の世界から現実へと戻ってくる。
目を覚ました後でも、彼との初めての夜は鮮明にまぶたの裏に焼き付いて消えてくれない。
溜息とともに起き上がり、昨夜換気のために開けっ放しだった窓を閉じたが、冷たく物悲しい思いは胸の内に残ったままだった。
私が橘深冬と恋人でいたのはたった一年だけ。それももう十年前の話だ。
当時十九歳だった私はもう二十九歳。深冬に至っては三十歳になっている。
肌を重ね結ばれたクリスマスの夜を境に、彼は私の前から姿を消した。