一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 そんな彼の肩をそっと押し、背伸びをして唇をついばんでから先に寝室へ向かった。



 彼と十年振りの再会をした時でさえ、鼓動はこんなに速くならなかった。

 義両親に会うよりも今の方がずっと緊張している。

 あの夜以来、初めて男性と夜を過ごす。

 もしかしたら今度こそうまくやれないかもしれないが、不思議と失望されるとは思わなかった。

 私は彼を信じているし、彼の愛も信じている。

 失敗したら手取り足取り教えようとするのではないだろうか。それはそれで恥ずかしくてたまらないが、深冬ならやりかねない。

 大きな期待と緊張を胸に彼を待っていると、サイドテーブルに置いたスマホが鳴り出した。
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