一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
一瞬深冬のものかと思ったが、置いてあるのは私のものである。
画面には〝母〟と書いてあった。
しばらく連絡を取っていなかったのにいったいどうしたのだろう。よりによって今夜これからという時に電話をかけてこなくてもいいだろうに。
「もしもし、お母さん? どうしたの?」
『ちょっと、結婚したってどういうことなの? ご近所さんに言われてびっくりしたんだから!』
「ああ、うん。いろいろあって……報告が遅くなってごめんね」
『昔から大事なことほど忘れてたっけね。いい加減、その癖もなんとかしなさい。旦那さんを困らせてからじゃ遅いよ』
覚悟していたよりも落ち着いて母の話を聞ける。