一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 両親は悪い人たちではない。ただ私に対して遠慮がなく、容赦もなく、自分たちの言葉が娘をどこまで追い詰めているか知らないだけだ。

『それにしてもあんたみたいなかわいげのない子と結婚するような人がいるなんてね。またつまらない話をしてるんじゃないの? 年取ってから捨てられたんじゃ笑えないよ』

 ちくちくと胸が痛むも、返事をする前に深冬がやってきた。私が電話していると知って残念そうに眉を下げ、すぐ隣に座る。

 シャワーを浴びたばかりの彼の身体は温かくて熱いぐらいだ。

 早く私が欲しいと懇願するように伸びた手が服の上を静かにすべる。

< 238 / 261 >

この作品をシェア

pagetop