一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
『いい? 女らしくしなさいよ。ただでさえぱっとしないんだから。結婚祝いにお化粧品でも送ってあげようか? そうしたら少しはマシになるんじゃない?』

「ありがとう。でも化粧品は合う合わないが激しくて。今使ってるのじゃないと肌が荒れちゃうんだ」

「……母親か?」

 深冬が私の胸もとで手を止めてささやく。もしかして母の声が聞こえたのだろうか。

 私がうなずくと、『俺に代われ』とジェスチャーで訴えられた。

「お母さん、深冬が……主人が挨拶したいって言ってるから代わるね」

 ひと言伝えてから深冬にスマホを渡した。

 なにやら怒っているように見えるが気のせいだろうか。

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