一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 両親に女らしくないと言われたのは顎が細いせいか。それとも気を付けて笑みを作らないと下がってしまう口角のせいか。

 これ以上自分の顔を見ていたら余計に気持ちが重くなる。

 そうは思っても、一度深冬を思い出してしまったらすぐには頭から追い払えない。

 付き合っていたのになにも知らされず、まるで私との関係などなかったかのように彼は去ってしまった。

 求められて余裕を失った私は、きっと彼の要求に応えきれなかったのだろう。つまらない女でしかない私に失望したのだ。

 なにも言わずに消えたのは彼の優しさか。それとももう言葉すら交わしたくないという意思表示か。

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