一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「城木さんの期待に応えられるように私も頑張りますね」

 最後に見た時よりも彼はずいぶん目尻のしわが増えていた。三年前に三十八歳だと言っていた気がするから、今はもう四十を超えている計算になる。当時幼稚園に通っていた娘はもう小学生だろう。

 彼の紹介もあり、私は新しい職場で歓迎された。

 城木さんは人の心を掴み、笑顔にさせるのが天才的にうまい。アモラリアでも既に信頼を得ているから、彼の同僚たちも私を温かく受け入れてくれたに違いなかった。

「じゃあ、オリエンテーションはこのぐらいで。午後一で交代してね」

「はい、わかりました。……気を付けるべきお客様はご宿泊中ですか?」

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