一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 最前線に立たされた私は、おそらく城木さんの期待通りに働けた。

 確認や相談が必要なお客様が少なかったのは大きいが、なんにせよ勤務時間を終えるまであと一時間というところまでなんの問題もなかった。

 午後六時を過ぎた頃、コンシェルジュデスクに立っていた私は入口付近でドアマンたちがざわついたことに気付いた。

 なにかあったのだろうかと様子を窺う私ともうひとりのコンシェルジュが見たのは、足を踏み入れるなり一瞬でロビーの空気を変えたひとりの男性。

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