一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 日本人にしては背が高く、モデルか俳優かと錯覚するほど全身のバランスが取れている。テレビや雑誌ならともかく、こんなに足の長い人を直接目にしたのは初めてだ。

 いかにもブランドものといったスーツに身を包んだ彼は前髪を上げていた。

 色白の肌にはっきりした目鼻立ち。切れ長の瞳は彼がまとう空気と相まって他人を寄せ付けない印象を受ける。

 どくんと私の中で心臓が大きく跳ねた。

 引き結んだ彼の唇は、開くたびに厳しい言葉を吐きそうだ。

 その想像はあながち間違いでもないのか、ドアマンや彼の周囲にいるホテルスタッフの表情から緊張を感じる。

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