一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
同じ世界で生きられないからと身を引いた人間はどれほどいたのだろう。
私だけは違うなんて言えるほどもう子供ではない。十九歳の私なら言えたかもしれないが、二十九歳の私は恋に生きるだけの若さを失っている。
「……私もね、あの夜はうれしかった。幸せだったよ」
「俺は今でもお前を幸せにしたい」
「私はあの頃の私じゃないのに?」
深冬が口をつぐむ。
「あなたは十年前の恋を追いかけてる。ここにいるのは大学生の杏香じゃなくて、社会人の杏香なの。あなただってそうでしょ? 私たち、変わりすぎたんだよ」
「だったらもう一度、ゼロからやり直せばいい。変わっていないものだってここにある」
私だけは違うなんて言えるほどもう子供ではない。十九歳の私なら言えたかもしれないが、二十九歳の私は恋に生きるだけの若さを失っている。
「……私もね、あの夜はうれしかった。幸せだったよ」
「俺は今でもお前を幸せにしたい」
「私はあの頃の私じゃないのに?」
深冬が口をつぐむ。
「あなたは十年前の恋を追いかけてる。ここにいるのは大学生の杏香じゃなくて、社会人の杏香なの。あなただってそうでしょ? 私たち、変わりすぎたんだよ」
「だったらもう一度、ゼロからやり直せばいい。変わっていないものだってここにある」