一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「悪い」

「ううん、気にしないで」

 正直に言うと彼との会話が中断してほっとしていた。

 深冬が電話に応えている間、再び窓の外を見て自分を落ち着かせる。

 好きという気持ちのまま踏み出してしまえたら楽だった。大人になるというのは、なんて面倒で悲しいのだろう。

「――わかった。今からでも記事を取り下げさせろ。そこの出版社の人間は今後うちのホテルに入れるな」

 なにやら物騒な話が聞こえて彼の方を向く。

 ちょうど電話を終えたらしく、深冬はまっすぐ私のもとへ戻ってくると疲れた様子で椅子に腰を下ろした。

「お前と俺の写真をゴシップ記者に撮られた」

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