一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「なっ……!」

「十年前に恋人だったのは事実だ。これを機に結婚を発表する。それならば愛人という不名誉な噂は消えるだろう」

「だからって!」

 そんな簡単に結婚なんて決めていいはずがない。しかも、私は彼を拒んだばかりだ。

「あなたはそれでいいの? 結婚なんて大事なこと、私なんかと……!」

「ゴシップ記事のネタにされるのは不本意だが、お前と結婚できるなら釣りがくる。こうなった以上、俺の提案を拒めないだろう?」

 手放したくない相手だからちょうどよかったと彼は言っているのだ。

 頭を抱えたくなるが、早く答えを出さなければならない。こういった対応は早ければ早いほどいいのだろうから。

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