一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「……結婚相手を自社スタッフにしたなんて、それはそれで問題じゃない?」

 悪あがきだと理解しつつ尋ねる。

「そうか? だったらお前より優秀な人員をうちに紹介してもらうだけだ。語学に秀でた

コンシェルジュを探すのは意外と時間がかかるからな」

「だけど十年も関係を隠してたことにするのは不自然すぎるよ」

「理由はどうとでも付けられる。いや、付ける」

 はっきりと言われて額に手を当てた。彼の中ではもう答えが決まっている。

「……私、あなたと二度目の恋愛はできないよ」

「そういうことにしておこう」

 私の言葉に納得していないのだと態度で示される。

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