お嬢様の憂鬱【上】
それから一度
あたしから男は手を放したが
今度はあたしを強く、強く抱き締めたのだ
「・・やめ・・て・・触らないで・・」
あたしの目からはぽろぽろ後から後から涙が出て来る
男という、全ての人が
今のるなには怖すぎたのだ
「大丈夫・・・。おれは何もしないから・・・怖かっただろう」
今にも消えそうな声だったが
はっきり聞こえた
ただの、口約束なのに
あたしはその一言が
ひどく、心に焼き付き離れなかった
何処かに浮いてた心をまた、引き戻してくれた
人の体って、こんなにあったかかったっけ…?