片恋
「あー、確か、えーと、……はるかちゃん。はるかちゃんだったよね? 去年同じクラスだった」

「う、うん、そう。覚えててくれたんだね。嬉しい……」

「もちろん。俺たち、結構喋ってたもんね」


延藤くんに笑顔で名前を当てられただけで、パッと花が咲くように、明るくなる女の子。


何も知らない私から見ても、分かる。

本当に、好きなんだな……。


彼女が延藤くんに告白をしたら、私に「付き合って」なんて、言わなくなるんじゃないかな。


明らかに他の人を好きでいる私なんかより、自分を好きでいてくれる女子にこそ、彼女になって欲しいって思うんじゃないかな。


そんな期待を込めて、邪魔をしないようにと、私は再び席を立つ。

教室の扉を見ると、伊月くんが入ってくるところだった。
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