片恋
「でも、ごめん。俺、真桜ちゃんと付き合ってるんだよね」


延藤くんは私の腕をつかみながら、『はるか』さんと呼んだ女子に、苦笑いを見せた。


告白をする前に、実質フラれてしまったことになるはるかさんは、「え……」と声を漏らして、固まっている。


延藤くんの声は大きくて、教室からは、ざわめきが起き始めた。


「嘘……、蕪木さんって、延藤くんと付き合ってたの?」

「ね、あんなにいつも伊月くんと一緒なのに」


そんなひそひそと交わされる噂話は、耳には入っていたけど、すぐに通り抜ける。


私は、誰よりも頭が真っ白になって、固まっていたと思う。
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