片恋

「まっ、待って……、はやい……っ」

「あー、ごめん。真桜ちゃん、女子だったね」


ほとんど全速力で廊下を走り抜けた延藤くんは、涼しい顔で立ち止まる。

手をつかまれてそのスピードに合わせていた私は、肩で息をするのに精一杯。


喉が乾いて張り付いて、苦しい。


「真桜ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫……じゃない!」

「少し休む?」

「そういう意味じゃなくて……っ」


胸に手を当てて、叫ぶようにカサカサになった声を絞り出す。
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