片恋
「……なんだ、気づいてたんだ」


そう呟いて笑う顔は、今まで見せたことのない表情。

笑顔のはずなのに怖くて、まるでケンカを売っているように見えた。


背筋が、寒い。

みんなの前で見せているあの人懐っこい表情は、嘘だったの?


「そうだよ。俺、本当は伊月のこと大っ嫌いなんだよね」

「な、なんで……? だって、今年同じクラスになるまで、話もしたことなかったんじゃなかったの?」

「それ、真桜ちゃんに関係ある?」


また、その顔……。

攻撃されているわけでもないのに、近づくのが怖い。
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