片恋

それから、伊月くんとイヤホンを片耳ずつ聴く日々が、当たり前になっていった。

朝のホームルーム前、当然のように片方のイヤホンを差し出され、耳に当てる。

「真桜、はい、イヤホン」

「ありがとう」

“蕪木”と呼ばれていた私の名前は、“真桜”になって。

ちょっとまだ、慣れない。

そのたびに、心臓がびっくりしてる。


「あ、この曲聴いたことない。これもナデシコだよね?」

「ああ、これは、インディーズのCD出した時の特典」

「え? 私もCD全部買ったと思ったんだけどなぁ……。これは知らなかった」


伊月くんを知れば知るほど、大分ナデシコの熱狂的なファンだということが分かって、私も結構なファンでいる自信があったのに、知り得なかった情報をたくさん教えてくれた。


すごいな。

インディーズ時代の、数枚しかない手売りのCDまで持ってるんだもんな。

これは、動画サイトに本人たちが上げていないものだから、聴かせてもらえてとても嬉しい。
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