片恋
「そんな、無理しなくていいよ。友達だけでいるところに、きっと私は邪魔だから」


笑って、そんな建前を口にした時だった。

延藤くんが、教室に戻ってきた伊月くんを視界にとらえたのは。


あ……。


「邪魔なわけないじゃん! 真桜ちゃんは俺の彼女なんだから、友達にもちゃんと紹介させてよ!」


わざとらしく大きな声を出して、延藤くんは私の両手をぎゅっと握る。


「紹介しなくたって、もうみんな知ってるけどね。じゃあ、蕪木さんも参加ね。また、あとで」


と、葉山さんは苦笑いをしながら、自分の席へと戻る。


逃げられなかった。

この急展開に、少しも楽しくもないのに、笑顔が張り付いて戻らなくなってしまった。

……いっそのこと、泣きたい。
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