片恋

トイレから出て、ため息と共に、かばんから財布を出す。

どれくらいの金額を置いていくといいかな。

えーと、学生料金で、ワンドリンク付き一時間が……。


「真桜ちゃん、帰んの?」

「っ!!」


うつむいて財布を見ていたから、そばで名前を呼ばれて、小銭をばら撒いてしまいそうになった。


「び、びっくりした……、延藤くん、なんで?」

「真桜ちゃんが出て行くの見えたから」

「そうなんだ……。ちょうど良かった。延藤くんに、私の分のお金渡していいかな?」

「あー、いいよ、いらない。真桜ちゃんの分は、俺が出す」

「なんで? そんなことしてもらう理由……」

「理由なら、あるある。だって、彼女じゃん」

「……」
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