片恋
「いや、なんでって、分かるでしょ。あんなプロみたいな……っていうか、実際ガチプロか。そんな奴と比べられるの、ごめんだし」

「? 比べる……?」


確かに私は、伊月くんの、ナデシコの歌が好きで、大ファン。

だけど、どうしてそれが、延藤くんと比べることになるんだろう。


「そっか、比べるまでもなかったよな、俺なんか。ごめん、忘れて」

「あ、そういう意味じゃなくて……」


延藤くんらしくもなく、ネガティブな意見に、目の前で手をパタパタ振って否定する。


「延藤くんの歌は延藤くんのものなのに、伊月くんと比べたほうがいいの?」

「は?」

「私、延藤くんのことは好きじゃないけど、歌声はすごく好きだと思ったから」
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