片恋
伝票を持ってレジに向かう背中を見て、ハッとする。

まだ、自分の分のお金を渡していない。


「伊月くん、待っ……──」

「こらこら、真桜ちゃん。普通、彼氏の前で他の男追いかけないでしょ」


店内で走り出しそうになった私を、延藤くんが手をつかんで止める。


さっきから、その彼氏アピールがしつこすぎる……!


「ちょっと、離してよ……! 私、自分の分の支払いしてないの」

「あー、なんだ、そういうことか。分かった」


意外とあっさりと納得して、延藤くんは手を離した。
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