片恋
ため息をつきながら、屋上から階段を下りる。

もうずっと、このままだったらどうしよう……。

考えるだけで、涙が出そうになる。


この扉を開けるために、少し勇気を出せばいいだけなのに。


それを考えたら、最初に伊月くんの音楽プレーヤーを勝手に使ってしまった時の方が、勇気が必要な出来事だった気すらするのに。


屋上への階段を下り切って、うつむいて歩き出す。


「きゃっ!」

「っ!? ご、ごめんなさい!」


その瞬間、誰かとぶつかってしまったらしく、その人が持っていた紙の束が、バサバサと舞っていくのが見えた。


相手の姿を確認する前に、とっさに謝る。

顔を上げると、そこには……。
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