片恋

「少し落ち着いた?」

「はい、すいません……」


目の前で一通り泣きはらした私は、今井先生に連れられて、保健室に来ていた。

養護教諭の先生は今日出張で、本来なら閉まっている鍵を特別に開けてもらった。


今井先生はおまけに、温かいココアまで淹れてくれた。


ふかふかの長椅子に座り、両手でカップを包む。

甘い香りがするのはココアじゃなくて、隣に座る今井先生から。

香水とか使ってるのかな。

大人の女性って感じがして、うらやましく思う。


今井先生が私の立場なら、きっとこんな風に人前で乱れたりはしなかっただろう。
< 287 / 412 >

この作品をシェア

pagetop