片恋
「分からないんです……。私は伊月くんのことが好きだけど、伊月くんが私をどう思ってるのかは知らないし……」


そう、私は本当は、伊月くんを何も知らない。

大好きなナデシコで、片方のイヤホンを貸してくれて、私だけには笑ってくれる。

それだけで、特別な存在になった気でいた。


「どうって……、確かに蓮は、姉の私から見ても読めない性格してるけど、付き合ってるんだから好きに決まってるでしょ?」

「? 付き合ってる……?」


今井先生の言葉に、首をかしげる。

それを見て、今井先生も同じ角度で首を曲げた。


「え? 付き合ってるんだよね? 蓮と蕪木さん……」

「いえ……、付き合ってないです……」

「……え?」


と、今井先生は「え」の形のままかたまって、首の角度を戻して、もう一度。


「えぇっ!?」
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