片恋
「延藤くんは、色々あって伊月くんのことが好きじゃないみたいなんです。だから、伊月くんのことを傷つけたくて、ナデシコの正体を黙っている代わりに、私を彼女に……」

「え……えええ……?」


今井先生は、さっきから「え」ばっかり言っている。

その気持ちは分かる。


「えーと? 待って、整理する。んん……、なんだか、複雑なことになってるみたい?」


今井先生は眉を寄せて、無理やり口元だけで笑った。


「蓮は、延藤くんに正体がバレたことは、知ってるの?」


私は、首を横に振る。


「絶対に、言えないです……。伊月くんは優しいからきっと、そんなことを知ったら、私を延藤くんから解放させるために、自分からみんなにナデシコの正体をバラしてしまう気がして」


ずっと隠してきたのに、私のせいで伊月くんが嫌な思いをするのは嫌だ。
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