片恋
今井先生はため息をついて、肩をすくめた。


「それは、もちろんそうよね。蕪木さんが自分を守るためにこんなことしてるって知ったら、保身なんてどうでもよくなるだろうし」

「でも私は、そんなの嫌です……」


今井先生は、泣きそうになっている私の額に手を添えて、顔を隠す前髪をよけた。


「でも、蕪木さんは、ずっとそのままでもいいの?」

「っ……」


ずっとひとりで抱えていた気持ちを言葉にされて、声が詰まる。


「延藤くんは、蓮が傷つく姿を見れば満足なの? そしたら、蕪木さんはすぐにでも蓮の彼女になるの? それって、いつなの?」
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