片恋
雨の中を走ったのは、距離にすると結構短かった。

延藤くんは、駅近くにある一軒の小さいカフェに、私の手を引いていった。


「……怒った?」


ふたりがけの席に案内され、向い合わせになるように座り、延藤くんがめずらしく申し訳なさそうに問いかけてきた。

私は、少なからず不機嫌な表情をしていたと思う。


「そう思うなら、私の話、聞いて欲しかった……」

「ごめん。今日来たのって、改めて断りに来たんだろうなって思ったから」

「……」


その通りだけど。

私はそれには答えず、目の前に置かれたお冷に口をつけた。
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