片恋
「……は? そんなことのために?」

「!?」


今までに聞いたことのない低すぎる声に、ビクッと体が跳ねる。

え?
今の、伊月くん?

伊月くんの声なの?

そんな声も出せるの?


音域広いんだな……。

さすが、中学生で大人気になった、シンガーソングライターなだけある。


……じゃなくて。


「い、伊月くん、あの……」

「真桜は、それにすんなり従ったの? なんで?」


えっ、怖い……。


「だって、ナデシコが伊月くんだってバラされたら、大変なことに……」

「だから? それくらいのことで、延藤なんかの彼女になったの?」


延藤“なんか”って言ったよね、今。
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