片恋
段々詰め寄られてきて、後ずさりをする。

手をつかまれていて、大幅な距離を取ることは出来ない。


伊月くんのこの表情には、見覚えがある。

あれは去年、私と伊月くんとの仲に嫉妬した女の子たちに、見せたもの。


あの時も、今も、伊月くんは私を守るために怒っている。


「『そんなこと』なんかじゃないよ……。伊月くんが嫌がることを止められるなら、それしか方法がないって思ったの」

「それで、真桜が犠牲になって嫌な思いしてたら、意味ないだろ」
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